憂鬱ラヂオ

頭文字Dの夢小説と普段の生活の綴りです

第三章 毒の染み付いた舌を嘗めたい

オレはこの土砂降りの雨の中、街灯に照らされ傘も差さずに立っている女の子を見た。そのまま通り過ぎたが、あれはもしかして幽霊だったんじゃないかと思って、一周してまた戻って来た。違う。人間だ。オレは思わず声をかけた。「おい、どうしたんだ」女の子は肩を強張らせてオレと視線を合わした。なんだか怯えている様に見えた。「貴方ですか」女の子はおどおどと、でも睨みつける様にして言った。「? 何の話だ?」女の子はパッと血相を変えて言った。「助けて下さい!!」突然の申し出に驚いたが、隣に乗せてあげる事にした。「ふーん、それで来いって?変な奴も居るもんだな」オレは心の中で思った。慎吾のヤロー。アイツまた変な事を企んでたな。後で叱っておかないと。と、色々話したり考えたりしてる内に自然と自宅へと到着してしまった。「ワリィ、オレん家…着いちゃった」頭をぽりぽりと掻きながら言ったら女の子は、ぷっと吹き出した。「面白い人…」「? すまん…せっかくだから美味しいもん出すから上がっていきなよ」しまった、もう女の子は亜澄の件で懲りているから家に上がらせたくないと思っていたのに。「じゃ、遠慮なく」女の子はニコッと笑って車から降りた。参ったな……。

第二章 毒の染み付いた舌を嘗めたい

オレはターゲットにした相手の情報を自分のスマホに素早く入れた。メッセージを新規作成のボタンを押し、“今すぐ○○の○○に来い。さもなくば家族友人皆殺す”と入力し、送信した。そして何事も無かったかの様に車に乗り込んだ。これはゲームに近い感覚があった。本当に来る確率40%…てとこか。別に沙雪の振りをして呼び寄せた方が確実なんだけどな。オレはそんな煩わしい事したくないのさ。沙雪のスマホは車に乗る前に渡した。後は待つだけ…。「おい、もっと飛ばせ」オレはアルコールがぐるぐるに回ったボヤ~とした頭で言った。「分かりました」車を次々に追い抜いて飛ばして行く。やがて、オレ達の車は住宅街へと入って行った。「沙雪さん、着きましたよ」「んん……もう着いたの?」「さっさと降りろオレぁ急いでんだヨ」沙雪はオレに対する怒りをみるみるうちに思い出した様で、「運転手クン、ありがとう。さよなら」そう言い、勢いよく車から出て行った。「……行きましょうか。ここから慎吾さんが今日泊まる奴の家まで結構ありますね」オレは煙草に火を付けて言った。「早く行こうぜ」「はっ、はい」車は慌てて発進した。激しく変わりゆく景色もそろそろ見飽きてきた頃、オレはふと毅のことを思い出していた。特に意味は無いはずなのに、何か引っかかる。オレはあいつに何か言わなければならない事があるんじゃないのか。「なあ……」そうオレは隣に居る奴に話しかけた。が、まさかと思った。居眠り運転してやがる……!コイツ確か、店で「遅番で寝てないんすけどね」とか言ってた事に気付く。アルコールでぼんやりしていた頭が急激に覚めた。前方には緩やかなカーブ、大丈夫だ。オレはステアリングを左へ切った。「!!」左右の分かれ道が目の前に現れたと思った瞬間、身体に物凄い衝撃が走った。

先程、○○県の○○の国道で、運転手一名、助手席に座っていた一名合計二名の死亡が確認されました。現場にブレーキの跡は無く、居眠り運転と思われています。

第一章 毒の染み付いた舌を嘗めたい

「これからはマジメにするんだぞ!」そう言われて、オレは約三年振りに外の空気を吸った。「慎吾さん、お疲れ様です」ザーザー降りの雨の中、ツレ達はオレを待っていた。煙草を差し出され、受け取ると火を点けられる。煙を吐いて「なんでよりによってこんな雨なのかねェ……」ツレ達が言う。「同感です。せっかくなのにもっとパーッと晴れてほしかったです」傘を差されながら車まで歩く。煙草を持つ手は重く気怠い。全身に倦怠感が襲っていた。どうせこの鬱陶しい雨のせいに決まってる。半分も吸っていない煙草を投げ捨て、ツレの車に乗り込む。「店、取っておきましたから。詳しい話はそこで」オレは相槌を打ち、雨に負けじと激しいエンジンがかかる音を聞いた。
肉が焼けていく煙と、煙草の煙でもうもうとしている店の個室でオレは、オレが居なかった間の話を全て聞いた。ハチロクの野郎が関東を全制覇した話や、メンバーの中の一人が結婚をして子供を産んだ話など、様々だったが、何故か皆、アイツの話をしてこない。オレが言うアイツとは、もうあの一人しか居ない。「で、毅はどうしたんだよ」その場に居た全員が、凍り付いた様に静まり返った。「あ…、それが今日呼んだんすけど、なんか曖昧な返事しか返ってこなくて……」続けて他の奴らも言う。「絶対に来て下さいって、オレ言ったんすよ。そしたら行けたら行くみたいな事言われて……」「結局来なかったって訳か、けっ、アイツらしいぜ」連中は胸を撫で下ろして、それぞれの世界へと戻っていった。オレなんかと顔も合わせたくないっていう、意思表示でいいんだな……?オレは別に構わねーけど、本当に、それでいいんだな……?オレは下を向き、肩を揺らした。笑いが止まらない。「慎吾さん、すみません。オレこれからバイトがあるんで、お先失礼します!」下を向いたまま手をひらひら挙げ、一人帰っていき、また一人、と連中は何かしらの用事で次々に帰って行った。「慎吾さん、今日はそのぐらいにしといた方がいいっすよ!飲み過ぎっすよ!」「バカ野郎、今日だから良いんだって話だよ!」久しぶりに浴びる様に酒を飲み、潰れた。「お願いします、もう帰りましょう」テーブルに突っ伏していた顔を上げ、ふらふらと立ち上がり、端っこで横倒れになっている女のケツを蹴り上げた。「出るぞ沙雪!!」すぐさま姿勢を正し、起き上がるとオレをひと睨みし、勢いよく鞄を取って先に歩いて行ってしまう。「待って下さいよ沙雪さん!」大慌てで沙雪の後を追って行くメンバーを見て堪らず笑っていると、沙雪が居た所から電子音がした。沙雪の奴、スマホ忘れてやがる。オレはスマホを拾い上げ、液晶画面を見やる。画面には「詩乃」と表示されていた。ふと、オレの中にある思考がよぎる。オレを呼ぶ声がする。口の端を歪に上げ、薄暗くて、けれど甘い感情をゆっくり噛み締め、店を出た。

強盗の被害に遭った喫茶店は何事も無かった様に今日も普通を装う

地を這う私達は空に憧れを抱く 私もその一人だ
空を見上げると 足元がぐらついて あまりの空の遠さに慄き 足取りがふらふらとする。
最近の出来事は派手にすっ転んだり等とかいった そんな面白い様なビッグニュースは無いけれど
落ち着いた日々を過ごしている。
何かアクションを起こしたりしないのは
この安寧に惰性で ただ暗闇に蹲っている、とでも言おうか。
外の風に吹かれ その冷たさを身体中で感じ その中にいつまでも居たいだけ。
変化など求めていない。低く暗い海底を当ても無く漂っている。
僕は自分が何をしたいのかが良く解る
穏やかな日々に身を委ねていたいだけ──
広い世界に怯え 小さな世界で細々と毎日を暮らしていたい
世界の空気を痛感する 空を飛翔する僕の心は まだまだ黎明を迎えていない一羽の小さな鳥

スパルタの狐 19 その後

俺はその日学校を休んで葬式に来ていた。誰も泣く気配などなかった。皆がただそこに仕方なく座り、仕方なく木魚の音でも聞いている感じだった。亜澄、俺は亜澄が両親に虐待されていて、終いには孤児院で暮らしていた、だなんて事知らなかった。何故、どうして教えてくれなかったんだ?今となっては聞く術がないよな。だって、亜澄は死んだんだから。他者に殺されたんだったら、俺はそいつに強い憎しみを抱くだろう。もしかしたら、殺意も湧いてくるかもしれない。でも、亜澄は、自分で決めたんだ。そこに、俺が介入する隙は残念ながらないのだろう。そう色々と考えていると、隣に座っているとある男性に肘で小突かれた。「おい、次お前の番だぞ」はっとして俺は思考から目が覚めた。立ち上がって、亜澄の所へ行く。亜澄は、とても穏やかな顔をしていた。まるで何も苦などない様に。一連の動作をして、席へと戻った。
火葬してる間、隣に座っていた男性──毅さんに、ちょっと外へ行こう、と誘われたので一緒に外へ出た。煙草を勧められたけど、断った。全然吸いたいと思う気分じゃない。「慎吾は捕まったよ」煙草の煙を吐いて毅さんはそう言った。「…俺、なんにも聞かされてないんです」「そうか。あいつが捕まった理由は、孤児院からあの子を引き取ったのにも関わらず大事にしてやれなかったせいでな。それで罪に問われた」毅さんは更に続けた。「孤児院の友達はあの子は逃げたとかなんとか言って裏切られたって思ったから、来なかったんだとよ」「…そうですか」毅さんと亜澄はどんな関係だったのかは話そうとはしなかった。俺はもはやそんな事はどうでもいいと思った。亜澄にとって、俺はどんな存在だったのか。その捕まった奴の顔がぼんやりと浮かんで、そいつと亜澄が行為をしてる想像をした。それは、かなり俺を辛くする要因だった。全ての原因はあいつにある様な気がした。拳に力を込める。そいつをめちゃくちゃにする想像もした。その時「おい、顔が怖いぞ。あいつが憎いだろうとは思う。多分お前の思ってる事と俺の考えてる事は一緒だ。だから、今あいつを殺す想像をしてたんだろ。」「…はい」「あいつも悪かった。だけどな、亜澄を一番最初に救ったのはあいつなんだ。それは分かるな?」俺は黙ったままだった。そうかな。確かに亜澄を助けたのはあいつだけど、だけど……「亜澄はもう戻って来ないんですよ。それに気付いてますか?」俺は毅さんを真っ直ぐに見た。「忘れろ」毅さんは目線を下におろして言う。「忘れるんだ」それは自分に言い聞かせているみたいだった。

スパルタの狐 18 ~完結~

慎吾が帰って来る前にシーツの乱れを綺麗にしたりシャワーを浴びたりした。毅の残り香も消臭スプレーを部屋全体にかけて、対策ばっちりだと思った。逆にキチンとし過ぎて怪しまれないか不安だったけど、慎吾はお馬鹿さんだからどうせそんな些細な事気付かない。ほら、そうこうしているうちに慎吾が帰って来た。「俺疲れた。寝る」部屋着にも着替えずに慎吾はベッドへと倒れ込んだ。そのままぐうぐうと寝てしまった。私は荷解きに取り掛かった。お皿を食器棚に仕舞ったり、服をハンガーに掛けたりした。次の段ボールを開けたら、いつか慎吾と水族館へ行ってお土産屋さんでこっそり毅と色違いのイルカのストラップを買ったのが出てきた。私はそれをそっと手に取り、思い出に浸った。思い出から目が覚めると私はそのストラップをズボンのポケットに入れ、また荷解きの作業に掛かった。やがて段ボールは減っていき、遂には部屋に段ボールが無くなってすっきりとした部屋になった。さすがに疲れた私は慎吾の寝ているベッドへ横になって、少しだけ慎吾の寝顔を見ていつの間にか眠った。
「亜澄!起きろ」慎吾の声ではっと目が覚めた。「暇だからゲームの相手しろー」「もうちょっと寝たい…」「新作のゲームが届いたんだぜ」「起きる!」時計を見ると夕方だった。私達はご飯を食べるのも忘れてゲームに没頭した。「げっ、もう22時じゃん、あー体痛い。亜澄、気分転換に走りに行こうぜ、腹も減ったしな」「いいよ」車に乗り込み、夜の町へと繰り出した。ファミレスで遅い晩ご飯を食べながら慎吾の話す馬鹿話を聞いて笑っていた。その後、妙義山へ行った。外へ出て、真冬の満天の星空を二人で眺めた。慎吾は煙草に火を点け煙を吐いた。「町が星屑に見えるな」「ほんとね」私も煙草に火を付けようとした時、慎吾がふいにこう言った。「結婚しよう」私は煙草を落としそうになった。結婚?いつかはそうなるとは思っていたけれど、ようやくその時が来たか、と思った。「もちろん」慎吾は照れているのか、向こうの方を向いていてどんな表情をしているのか気になったので覗き込んでみた。「見んな馬鹿」やっぱり照れているんだあ。私は笑いながら慎吾の顔を見ようとがむしゃらに腕を引っ張ったりした。楽しかった。
家に帰って、慎吾が眠りについたのを確認して、私は自分のコートのポケットからある硬い物をゆっくりとした動作で取り出した。慎吾が護身用にでも使えとばかりに勝手に忍ばせた“ナイフ”だった。私はイルカのストラップの紐を柄に結んだ。首に刃先をあてがい、一気に押した。この世に産まれてきたのは何かの間違い。神様のミスだ。だから私は自分でケリを付けなければいけない。沢山辛い事もあったけど、私はきっと幸せ── だった。

君の為なら俺の命を天秤に掛けてもいい 死刑を執行してくれ 来世でまた逢おう

新年が明けて、僕は一つの決断を迫られている 去年からずっと引きずってきた思いを 面倒をよく見てくれた二人に打ち明けなければならない こんな切羽詰まった様な 生き急がされる様な 思いは御免だ 僕は自由へと飛び立つ 普通に生きてるだけで精一杯なのに あんな重役など僕には相応しくない 今こそ逃げ出す時だ その時が来たのだ さあ僕を野に解き放て 僕は逃亡する 振り向かない 逃げるという行為は 自分を肯定する行為だろう 甘ったれで生半可な奴なのさ 僕はいつだって逃げ出す 無駄な時間を割かせてしまったね 懺悔室でぶちまけて×をくらって上からタライが降ってくる人生 一個では生ぬるい もっと落ちてくるべきだろう!私は 自分のところへかえりたい