希死念慮_同族嫌悪

どれほどあなたのこと思う

輪廻は斬りつける「歪な愛は結晶となり砕け散る」

俺は健次の家で勉強をしていた。健次は勉強に飽きたのか、寝てしまっている。時刻は夜8:00をまわっていた。

裕「健次、おい、起きろよ」

ピクリとも動かない健次を見て、俺はよっぽど熟睡しているのだと思った。けど、俺帰らなくちゃならないから、今度は激しく揺さぶって起こした。

健「ん…」

裕「健次ありがとな、俺そろそろ帰るぜ。あっ、そういえば明日サッカーの朝練あるんじゃなかったっけ?」

健「サッカー……」

そう言って素早い動きで立って、奥の机の引き出しから何かを持って俺に近付いてきた。
ほんの一瞬の出来事で、気が付けば俺の両手は後ろにプラスチックみたいなもので出来たバンドのようなもので縛られていた。
状況が分からず混乱している間にも健次は動いていて、今度はガムテープを持ってきて俺の口をそれで塞いだ。ますます混乱していると、奴は俺の首根っこを持って部屋から出された。
健次の顔は、虚ろだった。
車の後部座席に乱暴に転がされて、健次が運転する車は荒っぽく急発進した。


しばらくして停車し、目的地にたどり着いたようだった。俺の服を引っ掴んで車から降ろされる。ここは公園だった。健次は俺に何かをする気だ。嫌な予感は的中したようだった。

健「横になったままで居ろ」

抑揚の無い声だった。暗くて、あいつの顔が見えない。それが余計恐怖心を掻き立てた。
助走をつけて走ってくる。嫌だ。怖い。逃れる術も無く、俺は顔面をめいっぱいの力で蹴り飛ばされた。口に血の味が広がる。間髪いれずにまた顔面を蹴っ飛ばされる。


どれくらい時間が経っただろう。10分?1時間?分からなかった。奴が俺の口のガムテープを勢いよく剥がす。血と混じった歯がなだれ落ちた。すぐにまた暴行が始まった。骨の折れる音が聞こえる。健次は俺を手当り次第に蹴飛ばして、蹴飛ばした。
どうして?と聞く間も与えない。今度は馬乗りになって拳を振るわれ続けた。

目が霞んできた頃、奴の暴走は止まった。すると俺を抱きすくめてきた。嗚咽をあげている…泣いているのか?俺はもうそろそろ限界を迎えていた。

健「えっ……うぐっ……ごめん……ごめんな……。お、俺、お前が野郎共にレイプされたの……ひぐっ、知ってるんだ。」

健「俺、お前の一番になりたかった。一番になれなかったから、悔しくて、イライラして、こんな非道いことをしてしまった。ゆ…許してくれ……」



健「裕希、好きだ。俺を抱いてくれ」




裕「出来ない」




健「はは……。終わりだ、裕希、愛してた。」

健「さよなら」



俺の目がかろうじて見たものは、刃物を首に真っ直ぐに突き立て、そのまま力無く倒れ込んだ健次だった。それと同時に俺の意識は途絶えた。





おしまい