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憂鬱ラヂオ

頭文字Dの夢小説と普段の生活の綴りです

スパルタの狐 16

目が覚めると横で慎吾が煙草をふかしていた。私は左手を見た。あ、夢じゃなかった…私は現実に生きていたんだ。軋む体を起こして血の滲んだガーゼを当てた左手首にそっと右手を重ねた。よかった…生きていたんだ…「おい」ハッとして横を向いた。「な、何…?」私はまだ慎吾にびくびくしていた。「それ、なんだ」ドキッとする。「俺そんなのしてないと思うんだけど」心臓が激しく鼓動を打つ。「それが何?悪いの?」胸に左手首を右手で包み込むように持ち心を支えた。吸っていた煙草を揉み消し、慎吾は私に向き合って急に抱き締めてきた。打撲跡がまだ痛みに喘いでいた。痛い程に抱き締めてくる慎吾に戸惑っていると、「こうなったのも、全部、俺のせいって分かってるんだ。でも…俺も、衝動を抑えきれないんだ。ごめん。謝っても、済む問題じゃねぇよな…」更に抱きすくめられる。「慎吾、痛い…よ」私は慎吾をつき跳ねた。「そうよ、謝っても済む問題じゃないって、自分でよく分かったわね、これはどうしようもない事なのよ…私、もう止められないわ」俯き黙っている慎吾に私は続ける。「こうなったのも全部あんたのせい、あんたのせいなの」「俺が馬鹿だった」「馬鹿じゃない、愚かよ、クズよ」肩で息をして私は全てを吐き出した。「でもお前ももう俺から離れられないって分かってるんだろ?」ニヤついた顔をして慎吾は暗い眼差しでそう言った。ぎくりとした。そう、私は、どんなに叩かれようと、殴られようと、もう慎吾という呪縛から逃れられない、逃げれない、避けれない、のだった。光ももう差さない深い深い穴へと堕ちていた。私は俯いた。悟られたくなかった。「傷見して」私は首を横に振った。腕を掴まれたが振り払おうとしても全然かなわなかった。ガーゼを剥がされて昨日の傷が世界へと姿を現した。「フフッ…俺はこの傷さえも愛しいし好きだぜ」まだ癒えない傷口から血が溢れてそれを貴方は啜ったね。私は自分を殺した。