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憂鬱ラヂオ

頭文字Dの夢小説と普段の生活の綴りです

スパルタの狐 11

私は部屋に戻って慎吾が寝ているベットの縁に座って煙草に火をつけた。「あすみ…」後ろから起きたらしい慎吾が抱きついてきた。「慎吾…ごめんね起こしちゃった?」「いや…俺今日早番だから準備しなくちゃ…めんどくせぇよぉ」ぐりぐりと顔を背中に押し付けてくる。私は慎吾の髪をくしゃっと撫でた。私は何も言わなかった。慎吾が私の体から離れて私と同じように縁に座って煙草に手を伸ばした。私達は無言で煙草を吸った。慎吾は火を消して用意をし始めた。「…いってくる」「いってらっしゃい」扉の施錠する音。私は部屋に一人になった。毅はあれからすぐに用意して仕事へ行ったし、私は何もする事が無かった。TVをつけてみた。朝のニュースが流れていた。隣の県で通り魔があったらしいとの報道があった。私はボーッとTVの画面を見つめていた。トイレに立った。流して水道で手を洗い、外へ出る支度を始めた。コートを着て外へ出た。特にどこへ行く予定もなく。街はクリスマス一色だった。もうそんな時期か…ウインドウに並べられたツリーやサンタのマネキンを見つめていた。そんな明るい街が嫌で、街から外れた。近くの公園に寄ってブランコに腰をかけた。煙草に火を付けた。煙を吐いてキーコキーコとブランコを揺らしていると数人の若い10代とおぼしき男達が公園にやって来た。私に気付いたらしくこちらをじろじろと見て何かを話している。私は煙草を地面に落として火を消した。顔を上げると数人の男達が目の前にいた。「よお、お前××じゃねぇか。学校に来ねぇで何やってんだよ」リーダーらしき人物に話しかけられた。全員にやにやしている。「不良ぶってんじゃねぇよ、この醜女」パン、と頬をはたかれた。「お前そんな醜女によく触れるな」笑い声。「で、お家で何やってる訳〜?」「彼氏の家に住んでいる」抑揚のない声で言った。また笑い声。「お前セックスばっかしてんのか!」私はコートのポケットの中に手を突っ込んだ。指先に何か硬い物が当たる感触がした。これは…「黙ってねーでなんか言えよっ」二人に片足ずつ持ち上げられてブランコから後ろへ落ちた。「ぷっ、白パン…!」その瞬間ポケットの中の物が転がり出た。「うわっ、こいつナイフ持ってるぜ」「犯罪者だ、逃げろー!」けたたましい笑い声と共に奴等は去って行った。あいつら同級生か…全然分かんなかった… 私はめくれたスカートを元に戻して、サバイバルナイフを手に持って立ち上がった。慎吾の奴、私にこんな物持たしてどうすんのよ。護身用に使えってか…私の手に持っているサバイバルナイフは震えていた。ポケットに戻して公園を後にした。家へと帰って、ベットに倒れて泣いた。
目覚めると慎吾と毅が揃ってゲームをしていた。「おっ亜澄、やっと起きたか、なんでお前コートのままベットに寝っ転がってんだよー」と慎吾が言った。目をゴシゴシと擦って「ごめんごめん、寒くてさ」「ったくさみーんだったら暖房付けろよ」「よっしゃ俺の勝ち!!」「あーっ今のナシだって!!この庄司慎吾サマがてめえに負ける訳ねぇだろ!」やいのやいのと騒ぐ二人に私は笑いながらコートを脱いだ。慎吾と毅が揃うのはなかなか珍しい。滅多にない事だ。「飯にすっかー」「たけちゃんよろしくー」「へいへい」ご飯はいつも毅が作ってくれていた。私は部屋着に着替えて用意されたご飯を皆で囲って食べた。後は皆それぞれの時間を過ごして、眠りについた。私は眠れなくて一人起き上がって二人が遊んでいた車のゲームをした。携帯で今何時かチェックした。午前1時だった。受信メールがあった。拓海からだった。もうすぐクリスマスだね。亜澄に会いたいよ 着信も入っていた。何件もだ。全て拓海からだった。私は無視してゲームに戻った。
クリスマス当日を迎えた。慎吾は事前に休暇を取って私と一緒に居てくれた。毅はいつも通り仕事だった。家でゴロゴロしていると後ろからネックレスをかけられた。「クッ、クリスマスプレゼントやるよ」リングだった。「慎吾可愛いとこあるじゃん!ありがとう!」「…おう ありがたく身に付けてろよな!!何しろ俺サマからのプレゼントなんだからなっ」ふふふ、と私は笑った。それから慎吾は私を抱いた。
正月になり、毅は風邪をひいた。そんな毅を置いて私達は初詣へと出掛けた。お賽銭を投げ私は慎吾に貰われた事に感謝した。慎吾と初めての正月だった。ネックレスは未だに付けている。願い事はこのまま幸せがずっと続きますように、だった。慎吾は何をお願いしたのか聞いてみたけど答えてくれなかった。家に帰って毅の看病をして、晩ごはんの時間になるといつも作ってくれている人が寝込んでいるので料理の出来ない私達はコンビニで買い物を済ませて残りの一日を過ごした。もうすぐ中学卒業だな、と思った。