憂鬱ラヂオ

どれほどあなたのこと思う

スパルタの狐 10

慎吾はイッて私を抱きかかえたまま眠った。私は孤児院を抜け出したあの夜の事を思い返していた。私は幼い頃から両親に虐待されていた。両親の喧嘩も絶えなかった。部屋にずっと閉じ込められてトイレも行きたいときに行けなかった。小さいボロアパートだった。父親は毎晩仕事から帰ってきては浴びるように酒を飲んでいた。その事に対して母親は怒っていた。怒鳴り声。瓶の割れる音。父は仕事が上手くいっていないようだった。腹いせによく父に殴られた。父が眠ると今度は母に殴られた。寒い日、私は薄い部屋着のまま家を追い出されてしまった。ろくに学校も行けてない状態だった。学校に行っても顔中痣だらけの私に話しかけてくれる子はいなかった。先生に心配されたが、大丈夫です、と言った。痣の事を聞かれても精一杯の笑顔を作って大丈夫です、と答えた。この事は自分でなんとかしないといけないんだ、まっとうに生きてる人様に迷惑をかけちゃいけないんだ、という気持ちがあった。でも、追い出されてついに見かねた隣人に通報されてしまった。私は孤児院という所に連れて行かれ両親は逮捕されたらしい、と後から聞いた。良かったね、と言われた。分からなかった。不登校に私はなった。孤児院の皆が楽しそうに学校での日々を語ってくれた。皆が楽しそうにしているのを見るのは好きだった。ある晩、私はもっと外の景色が見てみたいと強く思った。皆が羨ましかった。そっと孤児院を抜け出した。夏の日だった。夜風が気持ちいいと思った。街並みを眺めながら歩いて楽しいな、と思った。そんな矢先、後ろから誰かに頭を殴られて視界がくらっとした。瞬間、私は連れ去られた、という事は明らかだった。車に乗せられて数人に羽交い締めにされて服を脱がされて全裸にされて何かヌルヌルしたものをあそこに付けられてあれが中に入ってきたのだ。私は知らない人達に処女を奪われた。私の初めては最悪だった。ちょっとでも嫌がれば殴られた のたうち回りたかったけど一切抵抗出来なかった。ファーストキスも何もかも奪われた。散々オモチャにされた挙句私は山の奥深くに捨てられた。道路に出るのがやっとの事でもう体はボロボロだった。私は倒れてしまった。どれくらいの時間が経ったのか分からないほど、或いは全然経っていなかったのかもしれない 車のライトが光った。私は咄嗟にまた奴らが来た、と思った。急いで逃げようとするも立ち上がる事が出来ない。車から人が出てくる。怖い。ごめんなさいごめんなさいと必死に謝った。これは孤児院を抜け出した天罰なのだと思った。しかし、「なぁ、落ち着けって。大丈夫か?」これは優しい言葉だった。私はハッとして顔を上げる。それが 慎吾との出会いだった。「乗れよ、車。」私は顔を横に強く振った。「大丈夫だから、な?」慎吾は私の目元まで下がり煙草の火を消して「安心しろ」と言って頭を撫でられて額にキスされた。ビクッとなって目をつぶった。目を開けたとき、慎吾の顔が真っ直ぐ目の前にあった。鋭い眼光に私はやられてしまった。目がハートマークになっていくのが分かった。ドキドキしながら私は返事をしたのだった。車に乗り込み、「お前いくつ?」と聞いてきた。「名前は?どこから来た?送ってってやるから」煙草の煙をふかしながらどんどん聞いてくる彼に私は「えっと、15…名前は亜澄…」それから私は孤児院の名前を言った。は?なんだ、それ?と聞かれて えっと…こ、孤児院て言うらしいよ、と言うと、彼は黙った。しばらくしてお前も煙草吸うか?と言われて吸ってみた。美味しかった。山を下りたらしく景色は街の中に変わっていた。「あ、あの、あ、ありがとう、ございました…私…帰ります」「そんなとこに帰らなくても俺んとこ来たらいいじゃねーかよ」「えっ」「俺が引き取ってやるよ」「ほ、ほんと…!?いいの、私、帰らなくて」「おう」嬉しくて泣いてしまった。それから慎吾のアパートに案内されて、まず風呂入れ、と言われその通りにした。風呂が温かかった。汚れた体を綺麗にすると風呂を出た。部屋から慎吾の声が聞こえ、その着てきた服はこっちで捨てろ、と言われた。バスタオルを巻いて部屋に来た。あのゴミ箱、と言われゴミ箱まで服を持って行った。「んー、俺の服しかないけど、とりあえず着とけ。まともなもんは明日買いに行こーぜ。俺明日バイト休みだからよ」上だけ着せられた。ダボタボだった。いい匂いがする… ていうか、もう1人ベットで寝てる人がいるんですけどー…誰だろう?慎吾は冷蔵庫まで行きジュースを取り出した。コップを取り出して注ぎながら「俺は慎吾だよ。そっちの奴は一緒に暮らしてる毅ってんだ。ほらよ、飲め」毅… 私はジュースを受け取ってごくごくと飲んだ。「飲んだよ、慎吾…」と振り返ると唐突にキスされた。「!?」慎吾の舌が入ってくる。わっ、待って、もう1人人間がいるのにー!でも、ドキドキして変な感じだった。「舌出して」「ん」ああ、慎吾に抱きすくめられて、他の人がいるのにこんな事して。私…気持ちいいと思っちゃってる… ぷはっと唇が離される。「亜澄、好きだ」私は真っ赤になったっけなぁ…それで私も「わ…私も…慎吾の事…好き…」って言ったっけ。そう回想しているといつの間にか時間が経った。慎吾は私から離れてぐぅぐぅ寝ている。私は起き上がってベットから降りて「毅」と呼んだ。毅の顔をぱしぱしと叩く。「毅、しっかりして」「う…ん」「毅大丈夫?」「あ…亜澄か…俺は大丈夫だぜ…いてて」「痛いときはちゃんと痛いって言うんだよ。毅…」ぎゅっとした。「ありがとな…俺明日仕事だから、風呂入んなくちゃ」「うん…」ふらふらと立ち上がり、風呂場へと向かって行った。「わっ…私もお風呂入ろーっと」するん、と脇を抜けてバタン、と一緒に風呂場に入った。「お前…な、何してんだ」「だって風呂の中で毅倒れられたら嫌だもんー。ねっいいでしょ。そうだ頭洗ったげる、さあさ、座って」「え、ええええ?!」困惑する毅を椅子に座らせて頭を流し始めた。「交代ごうたいね〜」「亜澄っ恥ずかしいから」「気にしないの!」「〜っっ」観念したように毅はうなだれた。「はい、次私ね」私は椅子に座り流されるのを待った。ん?なかなかこないなぁ…「毅?どしたの?」「あ、いや…悪ぃ…なんでもねぇよ…」もしかして照れてたのかな、可愛いなー。「あははは」「しーっ静かに!あいつにバレたらどーすんだっ」「あっ!そうね」そうして黙々と流してくれた。「髪の毛なげぇと大変だな」「うん、まぁね」「はい!終了だぜ」「ありがと〜私先つかっとくね」「お、おう」ジャー…。「おっ俺先上がっとくぜ」「何言ってんのこっち!」ぐいっと毅を引っ張った。「うわ〜危ない!」石けんで足が滑って毅は風呂の中へドボンした。私は可笑しくて笑いをこらえるのに必死だった。「ぶはっ」ザバーと毅が上がってくる。「いっひっひ」「てめえっ…!」「きゃーごめんなさい」「馬鹿っ静かに!」「あっ!…てか、あなたもでしょー」「うっ…」ぷっ、と吹き出して2人とも笑った。小声で。