憂鬱ラヂオ

どれほどあなたのこと思う

スパルタの狐 9

2人で家に帰ったら、家には慎吾がいた。慎吾は憤怒の形相を浮かべながら「お前らどういうつもりだよ」と言った。「2人でファミレス行って買い物してきただけだよ」と私は何の気もなく言った。毅は「そうだぜ、慎吾、落ち着け、俺達はやましい事なんかなんにもしてない」と言い、慎吾はすごく不服そうだった。「てめえ人の女に手を出したらどうなるか分かってんだろうなぁ」毅にものすごい圧で詰め寄る慎吾。あ?と毅が答えるので、場はより険悪なムードに包まれた。2人ともやめてと間に入ると慎吾に左頬を平手打ちされた。痛っ…。てめえ女の子に向かって何しやがる!と毅の声が聞こえる。私は平手打ちの勢いで後ろへ倒れ込んだ。慎吾がしゃがみこんで私の顎を掴んでぐっと顔を寄せてから「レイプされて山に置き去りにされたお前を助けたのは誰だったかなぁ?もう忘れちまったか?ん?」「く…離してよっ」慎吾は続ける。「ボロボロになったお前を拾ってやったのは俺様だ、バカヤロー」今度は右頬をバチンと叩かれた。慎吾!!ふざけんじゃねぇ、今それとこれとがなんの関係があるんだよ、と毅は慎吾の胸ぐらを掴んだ。あぁ?と慎吾は立ち上がりてめえこそ人の女に何してんだぁ?と言ってついに毅を殴った。やんのかてめえと毅もやり返す。ああ…もう終わりだ…拓海…拓海に会いたい…と私は強く思った。2人の喧嘩が始まった。私はどうする事も出来なかった。助けてもらったのは事実だし、なんにも言い返せなかった。ぐったりと落ち込んでいる間に2人は部屋の中に入って行っていた。顔を上げると鈍い音が聞こえて慎吾が毅の頭をタンスにぶつけていた。さすがにそれはまずいと私は思い立ち上がって慎吾に抱きついた。「慎吾!!やめて!!」ぎゅっ、と後ろから強く抱き締めた。慎吾はハッとなったように「亜澄…」と言った。そのまま毅はずり下がって倒れた。「もうやめようよ、慎吾の事だけ愛するから。私、もう慎吾しか見ないから」と言った。肩で息をしている彼を抱きすくめて、言った。こうするしかないと思った。「へっ…分かってるじゃねーか」慎吾は振り返りベットまで私を押し倒した。強引に下着を脱がされてそのまま突っ込んできた。うぅ…と毅が唸る声が聞こえた。毅のいる所で、セックスなんてしたくない、でも抵抗しても動けなかった。反射的に声が出てしまう。痛いよ慎吾、と言っても今の彼には何も聞こえていないようだ。どうして…何故…私は泣いた。「俺は亜澄の事が好きなんだよ」痛い愛だった。慎吾は不器用すぎてこんな風にしか愛せないんだ、と思った。毅の様子を確認しようと少しずれて見たらまだ床に倒れていた。でも声は聞こえていると思う、無慈悲な事に。慎吾に気付かれ元の位置に戻される。ああ、毅が見えなくなった。私はそのまま慎吾に身を委ねるしか出来なかった。